自然系素材のすすめ

経年変化に対して信頼のおける素材といえば、まず思い浮かべるのは自然系の素材でしょうか。内装でいえば、無垢のフローリングに壁や天井は漆喰塗り、これは私の勧めている組み合わせです。一般的に自然素材というのは、傷や汚れがつきやすかったり、割れたり、反ったりと暴れる欠点が挙がってきます。そのリスクを負ってでも尚勧めているのは、手や足触りの温かみのある感覚や、何となく実感する調湿や脱臭効果、有害な揮発性有機化合物を一切含んでいないという安全性。そして何より、視覚的なリラックス効果でしょうか。時とともに飴色に馴染んでゆく無垢のフローリング。柔らかな光を部屋いっぱいに拡散する漆喰。自然素材は我々の表層意識を突き破って更に内側へと迫ってきます。
『美しい』という言葉には、様々な意味や感情を含んでいるが、『綺麗』はキレイで終わり、先に待っているのは『汚れ』だったり『醜さ』だったりする。最近のキレイな建物はいずれ汚くなる。私は有名な左官職人の方の言葉にインスパイアされてしまいました。誰かがいいました。「いやいや、そうはいっても大切なのは、安全を意識しながら予算内におさめることだ。」私はこれも間違っているとは思いません。コストやクレームの観点から、伸び縮みや反りの少ない合板のフロア材や安価なビニールクロス、外壁なら防火サイディングという仕様はもちろんありです。とにかく自然素材は割高ですからね。私は無理してそこかしこに自然素材を取り入れなくても、例えば、家族が集う居間に使って皆で美の存在を共有したり、快眠へいざなうため寝室に部分的に取り入れたり、それだけでも自然素材の素晴らしさを知るには十分だと思っています。たとえ『私は美を必要としない』と拒絶する人がいたとしても。