木造軸組工法での耐力壁の有効最小値

よく令46条表1((8)を除く)および昭和56建告1100号(第1第十二号を除く)に仕様と壁倍率が与えられた耐力壁の適用範囲の最小値(柱芯々距離)はいくらですか?という質問をいただきます。
「木造軸組工法住宅の許容応力度設計2008年版」によると、最小値は90cm以上とし、かつ、階高/幅は3.5以下。面材張り (昭和56建告1100号第1第一号~代四号) 耐力壁については60cm以上、かつ、階高/幅は5以下と明記されています。


水平構面の剛性について

施行令第3章3節の木造仕様規定では、筋かい等の耐力壁についてそれなりに明記されていますが、水平耐力に関しては「隅角には火打材を使用」としか記載されていません。一般的にも木造2階住宅程度のいわゆる4号建物では、水平耐力についてあまり重要視されていないようです。
しかし、やはり水平耐力は軸組の耐力壁と同じくらい重要です。壁がいくら強くても、水平剛性が脆弱だと地震力や風圧力等の横からの強い力に耐えることが出来ず、最悪の場合、建物のねじれによる崩壊をまねいてしまうからです。
イメージしやすいのは、蓋の無い箱に両側から力を加えると簡単に変形してしまいますが、蓋をかぶせた状態で力を加えると、なかなか変形しない(変形しにくい)という感じです。建物にすると、小屋梁の水平方向に合板を直張りする状態が蓋になります。
したがって、笑い話的になりますが「小屋裏に物置スペースをつくっても、そこには物を置かない」という矛盾した用途こそが、耐震には非常に有効であるといえます。


木造筋かい検討の際の注意点(2)

2、3階部分の筋かいなどの耐力壁端部の左右いずれか、または両方に下階の柱や壁がないものを梁上耐力壁といいます。梁上耐力壁になると、梁がたわむ影響から耐力の剛性が低下するので、耐力壁の耐力を低減して計算する必要があります。条件によっては耐力が半分以下になるので、小梁などのいわゆる2次梁以降の横架材に載る耐力壁を多く配置する建物で、施行令の仕様規定のみで検討される場合は、特に注意が必要です。


木造筋かい検討の際の注意点(1)

例えば、施工令の仕様規定による45×90の片筋かいの壁倍率は、圧縮側、引張側関係なく2.0ですが、許容応力度計算により耐力を算定する場合での等価壁倍率の数値は、引張り1.5、圧縮2.5と異なっています。数値からも分かるように、圧縮方向に作用する耐力の方が強いことから、建物の同一軸方向に対して、筋かいの留め付け向きは左右バランスよく配置することが大切です。